定期検診よもやま [癌と経過]

手術と放射線治療のあとも、定期的に検診がある。日によっては血液検査や骨密度の検査もあるが、概ね触診とその後の様子を尋ねられるだけだ。先日もそんな軽い一日で、受付を済ませて呼ばれるのを待っていると、診察を終えたオバ様が出てきた。

白髪ショートに赤い口紅、黒い服に黒基調のスカーフ。黒いパンツには銀のライン。ショルダーバッグは黒地に白の水玉。
オシャレだけどなかなかクセのある人だろう、と思ったら案の定。隣に座るなり

「あなた、手術した?」

「(ダイレクト過ぎて面食らう)はい。おたくもですか?」

「そう8月。2年で死ぬ。6割。」

話の流れからステージは1のようだ。1ならば五年後の生存率が約97パーセントなので、大丈夫でしょうと話す私を遮るように

「浸潤?全身に広がるわ。樹木希林と同じ。2年で死ぬの。あなたはいつ切ったの?」

「2年前ですが。」(ホントはもう2年半超え)

「あらそぉ?!…2年生きるんだ…。でも2年で死ぬわ!」

何を聞いているんだこの人は。

「放射線は受けられました?」

「今日で終わったの。最後だから多めに当てときますって。」

「あぁ、そうなんですか。それは出血大サービスですねぇ。」

もう何でも好きなように言って。

次回の予約日を連絡しにきたであろう職員さんは、マシンガントークに割って入る事が出来ず、巻き込まれてしまった。やっとの事で振り払うまでに何分くらい捕まっていたのだろう。ww

「断捨離した?死に支度。しとかなあかんよ!」

私は普段通りの暮らしを好きなように続けるし、私が消えたら全て捨ててくれて構わないので、と言おうにも口をはさむ間がない。会話はキャッチボール。これはドッチボール。一方的にぶつけられるばかり。

そうしているうちに、こちらの診察になった。(やっと解放される!)
女性は私の方をポンと叩いて

「じゃあ。しっかり!」

診察室に向かう私。長椅子に一人となったその人の輪郭に、なんとも言えない寄る辺無さを感じた。
…きっとこの人は心に不安を抱えているのだろうと思った。気丈な振る舞いとマシンガントークは、崩れそうになる心の外に硬い殻を作るためなのではないだろうか。

いいのです。不安のない人なんていません。素直に怖いと言うのもよし、そうしないのもよし。
ここに来る人は皆同じ。

二度と会うことはないであろう人に、背中越しに小さなエールをした日でした。










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