告知 [癌と経過]
首から上のどこかで、パチンとスイッチの切れる音がした。
「今日はご家族は?」
「・・一人です」
しばらくの沈黙の後、これまでは明るかった担当医の口から低い声が出た。
「残念ですが、癌です。」
切れたのは、感情のスイッチだったようだ。
医師はどこからかA4用紙を取り出し、口頭で説明しながら病名と治療方針を書き記し始めた。スレンダーでおしゃれな女医さんの指先に握られたペン先から、賢そうな文字が白い紙に刻印されていくのを、私は只々見ていた。
「・・大丈夫ですか?」
「・・はい。」
これは現実なのだ。
担当医は余計なことは一切おっしゃらなかった。手術日を告げ、A4用紙を渡された。
待合室に出て、看護師さんから今後の予定を聞く。続く精密検査の日程、入院時に必要な物品。多分同年配の彼女はひざを折り、私の目線の下からそっと入り込むように説明をした。
「・・大丈夫ですか?」
「・・はい。」
あぁ、放心状態に見えるのだろう。私の様子を気遣いながら、柔らかい声で必要な説明は続く。
「お世話になります。よろしくお願いします。」とソファから立ち上がった。術後必要なので、入院までに院内で購入してくださいと言われた物品を買いに、私は購買部に向かった。そして会計を済ませたのだろう。そこはよく覚えていない。
「運転に気をつけること」それだけ腹をくくり、向かったのは美容院だった。
「今日はご家族は?」
「・・一人です」
しばらくの沈黙の後、これまでは明るかった担当医の口から低い声が出た。
「残念ですが、癌です。」
切れたのは、感情のスイッチだったようだ。
医師はどこからかA4用紙を取り出し、口頭で説明しながら病名と治療方針を書き記し始めた。スレンダーでおしゃれな女医さんの指先に握られたペン先から、賢そうな文字が白い紙に刻印されていくのを、私は只々見ていた。
「・・大丈夫ですか?」
「・・はい。」
これは現実なのだ。
担当医は余計なことは一切おっしゃらなかった。手術日を告げ、A4用紙を渡された。
待合室に出て、看護師さんから今後の予定を聞く。続く精密検査の日程、入院時に必要な物品。多分同年配の彼女はひざを折り、私の目線の下からそっと入り込むように説明をした。
「・・大丈夫ですか?」
「・・はい。」
あぁ、放心状態に見えるのだろう。私の様子を気遣いながら、柔らかい声で必要な説明は続く。
「お世話になります。よろしくお願いします。」とソファから立ち上がった。術後必要なので、入院までに院内で購入してくださいと言われた物品を買いに、私は購買部に向かった。そして会計を済ませたのだろう。そこはよく覚えていない。
「運転に気をつけること」それだけ腹をくくり、向かったのは美容院だった。
2017-07-03 13:14
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