手術2 [癌と経過]

 手術終了は、予定時間を少し超えたらしい。 ぼんやりと意識が戻りつつあるなかベッドに移されたのを覚えている。意識がクリアになると同時に私は右手を左の脇の下に伸ばした。

「・・あった。」

「手術中にリンパ節転移が見つかれば切除します」と聞いていた脇には、手術前と同じくらいの皮膚の感覚があった。
転移はなかったのだ。

 部屋に戻ってからは、30分後 1時間後 2時間後・・・と、することが決まっていた。
足首を動かす
体を少し起こす
ベッドから足をおろす、それによって血圧の変化がないかが一つのヤマ。
次はトイレまで歩く

 少しでも早く原状に戻すことが回復にとって良いというのが今の医療の常識だ。ここまで順調。一晩スムーズに超えられることが次のステージ。同室の方達は手術当夜は激しい嘔吐に見舞われて、一晩中何度も看護師さんのお世話になっておられたが、わたしはそれもなく静かに夜を過ごした。とはいえ、翌日食後のトレイを配膳室に運ぶという簡単なことが、まだまだ厳しかったのも事実だった。
 お見舞いは全てお断りしていたので、来るのは家族と妹だけ。心配性の母が姿を見せないのを訝しく思ったが、何かあったとしても私には現状なにも出来ないし、それ以上考えるのは止めにした。(案の定であったがここに書くのはやめておこう。)

トレイを返しに行く足取りは、回を重ねる毎しっかりしたものとなり、院内のカフェに珈琲を飲みに行けるようになった。リハビリも順調だった。センチネルリンパ節生検のためにリンパ節の切開はしてあるので、多少の不自由はあったが。

 そんなふうにしているうちに退院の許可がおりて、六日後退院。入院時ぴっちりしていたジーンズの腿は緩々になっていた。



 
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